RECRUITING
INFORMATION

仕事紹介 | プロジェクト紹介
下水処理施設の地震対策

震災にも揺らがない
強靭な水インフラを
実現するために

大規模震災が珍しくない日本では、
インフラの耐震補強が重要課題です。
中でも、人々の生活を支える下水道は、
被災時にも機能を確保することが
強く求められています。
こうした社会要請を背景に、日本水工設計は、
数々の耐震補強プロジェクトに取り組んでいます。

▼土木計画担当
下水道一部 設計三課 西脇 和也

自治体の構想を具体化していく役割。下水道総合地震対策計画の策定を行う。

▼土木設計担当
下水道二部 構造設計課 小川 信平

計画が決定された後、診断・設計を行う。地下部分の土木構造物を担当。

▼建築担当
建築部 建築課 鈴木 哲平

地上部分の建築物を担当。耐震化は人命に関わるため、責任は大きい。

▼機械担当
施設部 機械設計一課 川原 聖矢

ポンプ設備など、機械に関わる設計を担当。下水道施設の処理機能を果たすうえで不可欠な設備を扱う。

▼電気担当
施設部 電気設計課 前田 良明

配電盤など、電気に関わる設計を担当。電気設備の強靭化は、施設全体の平常稼働に不可欠。

自治体が抱える課題や、
描くビジョンを理解し、
下水道事業の計画に
落とし込んでいく

6月:受注

春の人事異動がひと段落し、落ち着きを取り戻したX県S市役所。執務室の一隅に、日本水工設計の営業担当の姿があった。ミーティングの相手は、下水道課のA氏である。A氏は都市計画や道路整備に携わった経験はあるが、下水道事業の主担当になるのは、これがはじめて。施設や管路の耐震性を懸念していて、大まかな構想は持っているものの、どう具体化してよいのか分からない。課題をヒアリングした営業担当は、「弊社が伴走します」と静かにうなずいた。

9月:調査

営業担当と課題を共有した土木計画担当の西脇は、A氏の構想を計画に落とし込むべく動きはじめた。まずは必要な情報を収集すること。現在稼働している下水処理施設の設計図や構造計算書、下水道台帳など、さまざまな既存の資料を揃え、耐震性能を把握していく。S市の震度分布図や液状化分布図も、重要な参考資料となる。地域条件を踏まえて、被害想定を行う必要があるからだ。耐震性能がないと判断した施設に関しては、耐震診断および補強工事の費用を算出していく。

2月:計画書の提出

約半年にわたる西脇の仕事は、いよいよ大詰めを迎えようとしていた。3月の予算申請が間近に迫り、いつもは鷹揚なA氏にも、焦りが見られる。西脇は、補強すべき施設や設備、またその補強に必要な概算費用を下水道総合地震対策計画としてまとめ、S市下水道課に提出した。「きみのおかげで、申請に間に合った。きっと予算がつくだろう。そうしたら、ぜひ構想を実現しよう」とA氏は西脇をねぎらった。

4分野の専門家たちが
密に連携し、
緻密な耐震診断と
補強施策の提案を行う

9月:受注

A氏の見立てとは裏腹に、S市の財政状況や国の方針など、さまざまな要因によって当案件は、実施が決まるまでに数年を要することになる。ようやく耐震診断の発注が決まった年、日本水工設計では、S市下水道施設の地震対策プロジェクトチームが編成された。チームの指揮をとる「管理技術者」のもと、土木、建築、機械、電気それぞれの「担当技術者」が集う。初回打ち合わせのためA氏を訪問する彼らの間には、緊張した空気が流れている。

10月:耐震診断

土木設計担当の小川と建築担当の鈴木は、実地調査のために、S市F水再生センターに足を運んだ。コンクリートの劣化具合や施設の寸法確認、設計図との照合など、確認すべき項目は多岐にわたる。小川が受け持つのは、沈砂池や反応槽など地下の施設、鈴木は管理棟など地上の建屋。広大な下水処理施設で、彼らの調査は3日に及んだ。こうした調査をもとに構造物をモデル化し、さまざまな状況を想定して耐震診断を行うのだ。計算の結果、地震時に崩壊すると判定された部材に対しては、補強検討を進めていく。

土木・建築担当の調査が終わると、バトンは、機械担当の川原、電気担当の前田に渡された。彼らの管轄は、汚水をくみ上げるポンプ設備や、操作盤などの電気設備である。土木・建築に関わる設備が骨、肉体とするならば、機械設備は心臓、電気設備は血管と例えることができるだろう。機械設備や電気設備を止めることはすなわち、施設全体の停止を意味する。今回の案件、彼らには大きな気がかりがあった。土木・建築担当から聞いた情報によると、“干渉物だらけの部屋”があるという。現地に赴いた二人は、電気盤がびっしり配置され、配管が複雑に入り組んだその部屋を目の当たりにして、頭を抱えた。耐震診断の結果は「要補強」。壁の厚みを増やす「鉄筋コンクリート増打ち工法」等の補強方法を検討する必要がある。しかし、工事作業者の入り込むスペースが、いったいどこにあるというのか……。

3月:納品

冬の間、プロジェクトチームのメンバーは、増打ち工法に限らず、さまざまな補強工法を比較したり、協力会社と打ち合わせを重ねたりしながら、“干渉物だらけの部屋”の問題を検討した。そして彼らはひとつの結論を導き出した。補強工事の概算費用は想定以上の多額に上る。設備の耐用年数も、そう遠くない未来に迫っている。ならば、機械設備、電気設備に関しては、いっそ新設した方が経済性に優れているのではないか。耐震補強と新設を組み合わせた提案は、初期のストーリーから大きく舵を切ったものだったが、A氏は大きな満足を示した。

いよいよプロジェクトは佳境へ。
無数の課題を解決し、
設計図を描き出す

9月:受注

診断の翌年、ついに実施設計の発注が決まった。先に提案した耐震診断の検討について、詳細に図面化していくフェーズである。本来、意気軒昂する場面だが、会議テーブルを囲むメンバーたちの表情は険しい。営業担当は一同に向けて、このように状況を説明した。「……というわけで、基本路線は問題ないが、例の“干渉物だらけの部屋”に関しては、もう一度、対策を考え直さなければ。X県から、急きょ示達が届いたらしく、設備の新設は容認できないという話だ。担当のA氏も大変落胆している。が、気持ちを切り替えて、早速われわれも設備についての耐震補強設計を進めていこう」。

10月:設計

覚悟を決めたチームの面々は、プロジェクトの仕上げに向けて勢いよく動き出した。土木設計担当の小川や建築担当の鈴木は、詳細設計図を書き上げていく。コンクリートはどれだけ必要か、鉄筋はどのような強度のものが必要か。部材の種類や数量を事細かに決定し、工事発注の準備を進めていく。一方、機械担当の川原と電気担当の前田は、再度、S市F水再生センターへ。自分の目で干渉物の位置を確認しながら、つぶさに写真に納め、円滑な移設のすべを模索する。はたして納期に間に合うか。焦る気持ちを押さえ込み、巨大で複雑なパズルを少しずつ解きほぐしていくのだった。

3月:納品

詳細設計図や数量計算書、構造設計書などで構成されている分厚い書類ファイルが、A氏の手に渡った。3年にわたる設計プロジェクトが完了を迎え、プロジェクトは施工会社へと引き継がれた。帰社の途、メンバーたちの間で交わされる「お疲れさま」の短い言葉からは、達成感の高揚がにじみ出ている。

Member's Voice

プロジェクトを終えて

土木計画担当

お客さまの
真剣な思いに
とことん向き合う

人々の生活に深く関わる仕事なので、もちろん、お客さまも真剣そのもの。計画当時の予算と、後工程で算出した予算に食い違いが出た際は、ご納得いただくまで丁寧に説明したことが印象に残っています。幸いなことにS市はまだ大きな地震に見舞われていませんが、施設の強靭化に貢献できたことを誇りに感じます。

土木設計担当

数万単位の人に
貢献している事実が
原動力になった

下水道は生活に不可欠なインフラ。そのため、高齢者の安否確認に活用しようという動きがあるくらいです。今回のプロジェクトに参加する中で、処理場の区域内、数万単位の人に貢献しているという事実が、大きな心の支えになりました。今後も可能な限りコストを低減し、周辺環境に配慮した提案を行いたいと考えています。

建築担当

部分最適ではなく
全体最適で
これからも貢献したい

今回、無事にプロジェクトは終わりましたが、1つの設備を補強して終わりではないと考えています。S市に限ったことではありませんが、現在、中長期的な維持管理や改築を前提とした、施設全体のマネジメントが重要視されているからです。これからも、持続可能な下水道事業に貢献していきたいと思います。

機械担当

現状維持に
満足せず
改善の知恵を絞る

このプロジェクトでは、機械をどのように移設するかが大きな課題になりました。単純に機械を移設するのではなく、移設することによって、現状よりも維持管理しやすい配置にできないか、検討を重ねました。お客さまに、そうした工夫を感謝していただけたことが、今回のプロジェクトでは大変うれしかったですね。

電気担当

提案の難しさ
奥深さを味わうことが
仕事の醍醐味

経験を積むほどに、コミュニケーションの重要性を実感します。自分が「正論」と思ったことを提案しても、必ずしも受け入れられるとは限りません。お客さまと対話を重ねることで課題の本質を見抜いて、「喜んでいただく」解決策を提案することが大切であり、またこの仕事の面白さ、奥深さでもあると感じます。

機械担当

現状維持に
満足せず
改善の知恵を絞る

このプロジェクトでは、機械をどのように移設するかが大きな課題になりました。単純に機械を移設するのではなく、移設することによって、現状よりも維持管理しやすい配置にできないか、検討を重ねました。お客さまに、そうした工夫を感謝していただけたことが、今回のプロジェクトでは大変うれしかったですね。

電気担当

提案の難しさ
奥深さを味わうことが
仕事の醍醐味

経験を積むほどに、コミュニケーションの重要性を実感します。自分が「正論」と思ったことを提案しても、必ずしも受け入れられるとは限りません。お客さまと対話を重ねることで課題の本質を見抜いて、「喜んでいただく」解決策を提案することが大切であり、またこの仕事の面白さ、奥深さでもあると感じます。