PROJECT STORY #03

世界でも屈指の災害大国である日本。過去には巨大地震がたびたび発生し甚大な被害を受け、台風や豪雨による風水害も毎年のように起こっている。こうした危機に対して水インフラを担う日本水工設計は、さまざまな現場で災害からの復興や防災に向けての支援を行ってきた。ここでは、最前線で災害復興や防災支援に数多く携わってきたベテラン社員と中堅・若手社員2人との対話を通して、日本水工設計の社会的意義をあらためて浮き彫りにしていく。

Outline

阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震などの震災、さらに頻発する豪雨災害などにおいて、被害を受けた下水道施設の復旧業務や、地震や津波に対応する設計指針の改定、そして防災や減災に向けた新たな仕組みづくりなど、日本の水インフラを守るための数々の重要な役割を日本水工設計は果たしている。

  • 1995

    兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)

    大地震の教訓を、
    耐震技術の進化へ。

    未曾有の揺れが示した「インフラの脆弱性」。
    その現実を受け止め、私たちは下水道施設の耐震設計指針の見直しに参画しました。
    のちの全国標準となる“強いインフラづくり”の礎が築かれた。

  • 2004

    新潟県中越地震

    地域の暮らしを、
    もう一度動かすために。

    被災で流れなくなった下水道管路の復旧は、住⺠の生活を守る要となる仕事。
    迅速さと確実さを両立し、地域の「⽇常」を取り戻すための設計に挑む。
    現場と向き合い続ける姿勢が試されたプロジェクト。

  • 2011

    東⽇本大震災(東北地方太平洋沖地震)

    想定を超えた津波に、
    設計の常識を塗り替える。

    これまでの基準では守りきれなかった現実を前に、設計指針そのものを再構築。
    津波被害を正しく反映し、未来の災害に備える全く新しい設計基準をつくり上げた。
    ⽇本のインフラを“より強くする”ための原点となりました。

  • 2016

    熊本地震

    街を支える水を、
    もう一度支え直す。

    大きな被害を受けた管路・処理場の査定や復旧設計を、自治体と共に一つひとつ丁寧に。
    水を届ける仕組みを立て直すことこそ、地域の復興の土台になる——。
    私たちはその思いで動きました。
    暮らしを支える“見えないインフラ”を守る使命を実感した災害。

  • 2018

    北海道胆振東部地震

    寒冷地のまちに、
    強いインフラを届ける。

    厳しい自然環境の中で損傷を受けた下水道施設の査定・復旧設計に対応。
    寒冷地特有の条件を踏まえた技術判断が求められ、基盤を守るための多⾓的な検証を実施。
    地域の安⼼を支える“確かな設計力”が問われた復旧でした。

  • 2020

    令和2年7⽉豪雨

    豪雨災害の真因を、
    科学する。

    甚大な水害を受け、被害要因を徹底的に分析する検証委員会の補佐を担当。
    再発防止へとつながる知見を導き出すため、現象の背景やメカニズムを丹念に解きほぐしました。
    「知ること」が未来を守る第一歩であることを示した業務です。

  • 2024

    令和6年 能登半島地震

    分断された社会基盤を、
    再び結ぶ。

    広域に及ぶ被害の中、上下水道施設の被害把握と復旧検討に対応。
    これまでの震災対応で蓄積した設計基準改定や災害査定支援の知見、
    水コン協との連携体制を活かし、早期復旧に取り組みました。
    同時に、DX活用や遠隔支援体制の重要性が改めて示された災害でもありました。

Profile

上水流 宏美

上席執行役員 東京支社長

1987年入社/工学部卒

入社以来、下水道の専門家としてキャリアを重ねる。地震や豪雨による災害対応にも数多く携わり、日本水工設計を代表して業界の公的な活動に参加し、災害に強い下水道施設を実現するための新たなルールづくりにも尽力している。

池田 啓輔

九州支社 技術部
下水道課

2018年入社/工学部卒

大学時代に熊本地震で被災した経験から、水インフラを支える日本水工設計の仕事に大きな意義を感じて志望。入社後は、九州支社にて下水道の計画や管路設計に携わり、豪雨災害を受けた地域の対策方針の策定にも関わる。

紺野 文由

東京支社 東北事業所
下水道課

2024年入社/理工学部卒

岩手県盛岡市の出身で、小学生の時に東日本大震災に遭遇。震災学習で上下水道などのインフラの重要性を学び、災害時に断水などの被害を防ぎたいとの思いから日本水工設計を志望。現在は東北地域の下水道の計画業務に従事。

※所属、掲載内容は取材当時のものです

Story

大災害が起こるたびに、下水道施設設計の
新たなルールづくりに力を尽くしてきた。

紺野
上水流さんは過去、国内で大きな災害が起こった時、下水道施設の復旧支援や地域全体の復興支援、防災に向けた新たな設計指針の策定などにこれまで多く携わられたとお聞きしました。具体的にどのような取り組みをされたのか、教えていただけますか。
上水流
まず印象に残っているのは、1995年の阪神・淡路大震災ですね。下水道施設も想定を超える大きな被害を受け、それを踏まえて下水処理場・ポンプ場や管路施設などの耐震基準が改定されることになりました。耐震基準の改定にあたっては、日本下水道事業団や日本下水道協会といった公的な機関が設計指針を策定するのですが、私もメンバーの一員として参加しました。新しい指針に基づく設計方法を示すため、構造計算の例をいくつか作成し、自治体やコンサルタント会社に向けた説明会では講師として解説も行いました。また、2004年の新潟県中越地震では、現地に赴いて当社が手がけた浄化センターの被害状況の調査や復旧設計を担当し、その後、こちらでも施設の耐震基準改定の素案作成に携わりました。被災地に向かう道中では、家屋が倒壊し、下水道のマンホールが浮き上がっている光景を目のあたりにし、地震というのはこんなに物凄いエネルギーを持っているのかと、あらためてその怖さを痛感しました。
池田
災害に強い下水道施設を設計するためのルールづくりにも、上水流さんは携わっているのですね。上水流さんが調査して検討された内容が、その後の設計指針に反映されているケースもあるのでしょうか。
上水流
たとえば新潟県中越地震では、本来ならこの地域は液状化しない地盤とされていました。しかし下水道の管路を設置するために掘削・埋め戻しを行った部分が液状化し、被害を拡大させてしまったのです。そこで、管路の埋設時には地盤にセメントを混入させて硬化させる手法などを提案し、新たな設計指針として採用されました。こうして、いままで気づかなかった問題点に直面し、新たな学びを得て、災害からインフラを守る仕組みづくりに貢献することに大きな意義を覚えながら、当時は懸命に仕事に取り組んでいましたね。
紺野
東日本大震災の時はいかがでしたか?私は東北出身で幼い頃に震災を経験し、特に上下水道が使えずとても大変だった記憶があります。そうした状況のなかで、上水流さんをはじめ当社がどのように復興に貢献されてきたのか、あらためて教えていただけますか。
上水流
東日本大震災後も設計指針の改定に携わりましたが、そこで求められたのは、これまで経験したことのない「津波」への対応でした。耐震設計に加えて耐津波設計の方法も確立する必要があり、海外の事例も含めていろいろな文献を調査し、有識者の方々からも意見をうかがいながら検討を重ねました。前例のない指針づくりで苦労しましたが、津波による浸水から下水道施設を守るための新たな知見を得ることができました。また、津波によって壊滅的な被害を受けた陸前高田市では、新たな街づくりとして、ゼロベースから災害に強い下水道管路を新たに計画することになり、その業務を私たちが担いました。復興に向けて全力を尽くしたことは、今でも強く印象に残っています。
紺野
東北の復興に当社がとても重要な役割を果たしてきたのだと、あらためて理解しました。私たちが手がける仕事の責任の重さを強く実感しています。

自らの仕事が、住民の暮らしを守ることに
ダイレクトにつながっていくやりがい。

池田
私は大学時代に熊本で暮らしていて、2016年の熊本地震で被災しました。この経験がなかったら、私は当社に入社していなかったと思います。就職活動中に当社を訪問した際、当時、九州支社の次長だった上水流さんや先輩方から熊本地震の災害対応についてのお話をうかがって、とても心を揺さぶられました。
上水流
熊本地震が発生した当時、私は九州支社の次長を務めており、まさに当事者として災害対応を行っています。下水道管路の被害が膨大だったため、当社が加盟している全国上下水道コンサルタント協会に自治体から災害支援の要請があり、同業7社でタッグを組んで支援にあたりました。各社でエリアを分担して被害状況を調査し、復旧のための設計を実施するなかで、私は熊本市役所に常駐し、業務の指揮を執りました。自治体の方から「熊本市はこんな震災に遭遇したことがなく、どう対応すればいいのかわからないので協力してほしい」と切実にお願いされたときは、ぜひ力にならなければと意気に感じました。この熊本地震を契機に、大きな災害が発生したときには水コンサルタント業界全体で復旧や復興を支援する体制が確立され、その点でも大きな意味があったと思っています。
池田
当社の説明会で、熊本地震で上水流さんや先輩方が地域のために尽力された様子をうかがって非常に感銘を受けましたし、私も災害時に活躍できる人材になりたいと思い当社に入社しました。入社後は、熊本市が所有する下水処理場や管路施設の防災・減災対策の取りまとめなどにも関わることができました。また、2020年に起こった豪雨災害では検証業務に携わり、上水流さんや先輩とともに、要因の分析と今後の災害対策についてまとめました。
上水流
この豪雨災害では、想定以上の雨水がポンプ場に流入し、排水能力が間に合わずに市街地が浸水してしまいました。後日、自治体からこの豪雨に対する検証委員会の補佐を依頼され、当時入社2年目の池田さんとその先輩に託したのですが、この一件で池田さんはとても成長したように思います。浸水メカニズムを解明するために、気象庁や消防署に残されている降雨データや雨水ポンプ場の運転データの分析や、関係者へのヒアリングをもとに浸水時の状況を把握してもらいました。その結果を整理し、今後同様の事象が発生した際の改善策をまとめたうえで、検証委員会に提示できる資料を作成してくれましたね。若手のうちから、こうした重要な仕事を任せるのが当社の文化であり、池田さんも良い経験を得たのではないでしょうか。
池田
おっしゃる通りです。検証作業は大変でしたが、雨水関連のデータ収集や関係者へのヒアリングは初めての経験で、非常に勉強になりました。熊本地震のとき、何も役に立てない自分に悔しい思いをしていたので、地域の防災につながる仕事を担えることにとてもやりがいを感じました。また、検証委員会へ出席も貴重な経験になりましたね。住民の方々の聴講やメディアの取材などが入り、緊張感のある場で先輩が委員会をスムーズに進める姿を見て、私も早く先輩のようになりたいと思い仕事へのモチベーションがさらに高まりました。

AIなどのテクノロジーをも駆使して
さらに高度な防災・減災の仕組みを追求。

上水流
紺野さんも、東北事業所で防災や減災への取り組みに関わっているんですよね。
紺野
はい。通常の下水道施設の計画業務に加えて、青森県内のとある自治体に向けて、大雨が降った際に浸水が想定される区域と浸水状況をまとめたハザードマップを作成しています。現在はその前段階として、雨水の浸水シミュレーションを実施し、災害時にどれぐらいの深さまで浸水するのか被害を可視化する作業を行っています。上司や先輩に確認しながら、自治体の担当者の方とも連携し、作業を進めています。
上水流
当社は災害が発生するたびに、下水道施設の耐震設計指針などの改訂業務に携わってきましたが、これらの活動で得た知見をもとに、今後はさらに高度で効率的な防災・減災支援を行っていくことが求められています。そのためにはDXへの取り組みもさらに強化する必要があります。紺野さんや池田さんには新しいテクノロジーの活用に対して意欲的に取り組んでほしいですね。
紺野
当社に入社して強く感じるのは、単なる災害復旧にとどまらず、地域社会の安全性を高めるための提案や技術開発に非常に積極的であるということです。実際に私もいま、下水道管に亀裂が入って雨水が侵入している箇所がないか、膨大な調査データからAIが判定するシステムを使って下水道の安全を守る業務に取り組んでいます。
上水流
現状、自治体では下水道管に関するデータは、まだ紙ベースの台帳に記録されていることが多く、災害時に必要な情報を入手するのに非常に手間がかかってしまいます。これを電子化すれば検索が容易になり査定のスピードも向上するので、まずは下水道に関するデジタルデータ基盤を整備することが重要です。また、管路内の調査はTVカメラを入れて映像を撮り、それを当社の社員が見て被害状況を判断していますが、これも画像AIなどを活用し検知させれば大幅に効率化できます。結果として復旧までの時間も短縮できるので、住民の方々が早期に通常の生活へ戻ることができます。当社が社会により一層貢献していくために、まだまだ取り組むべきことは山積みです。
池田
私もAIには関心を持っています。特に豪雨災害時の浸水予測に活用できればと考えています。可能な限り早い段階で、どのような浸水が発生するのかを住民の方々に情報提供できれば、とても価値があると思います。また、ドローンも有効な技術であり、災害状況の把握や情報発信に活用していきたいですね。
上水流
災害の復旧や復興、防災や減災業務で活躍できる技術者になるためには、通常の計画や設計の業務をしっかりと果たしていくことが大切です。それらを通して下水道施設を知り尽くし、蓄えた知見をフル活用することで、復旧や防災・減災で自治体や住民の方々に貢献できると思っています。二人も、常に防災や減災に対する意識を持ちながら通常業務に取り組み、これからの日本に必要とされる技術者になることを期待しています。

※所属、掲載内容は取材当時のものです

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