プロジェクトストーリー Story
土木・建築・機械のスペシャリストがチームを組んで、
耐水化設計に挑む。
今回、3人が携わった浄化センターの耐水化プロジェクトの意義を教えてください。
- 山田
- 下水道施設の耐水化は、ここのところ全国各地で大雨による水害がたびたび発生していることもあり、大変重要な社会問題となっています。下水道施設が浸水して機能がダウンしてしまうと、私たちの生活に大きな影響が及ぶため、国も浸水対策を推進していくことを掲げています。このさぬき市の浄化センターの耐水化プロジェクトも、そうした動きのなかで立ち上がりました。
- 鈴木
- この浄化センターは過去、豪雨で浸水被害を受けたことがあるんです。お客様も危機感を覚えており、早急に対策したいというご要望を受けて当社が耐水化を支援することになりました。
- 日下
- 下水道施設の耐水化は、最近大変盛んになっている取り組みですが、これまで当社が携わってきたプロジェクトは、施設内の重要な設備だけを対策することが一般的でした。今回の案件は、以前に被害を受けたこともあり、浄化センター内の建物や設備すべてを浸水から守るという方針が打ち出され、その点でこれまでのプロジェクトとはスケールが異なるものでした。
このプロジェクトで、3人はどんな役割を担っているのでしょうか。
- 鈴木
- 下水道施設の耐水化は、自治体全体の課題を明らかにしてどのような対策をすべきか構想する計画策定から始まり、そのコンセプトをどう実現するかという基本設計、そして基本設計に沿って具体的な方策を立てていく詳細設計という流れで進められます。今回の耐水化プロジェクトで、当社はこの一連のプロセスをすべて担いました。私は基本設計から参加し、建築担当として詳細設計まで担当しています。
- 山田
- 鈴木さんが建築担当として、地上の建築構造物の対策を手がけたのに対して、私は土木担当として施設の地下の土木構造物を担当しています。浄化センターの地下にある設備を守るためにどのように対策すれば良いか、いろいろと検討しながら設計を進めています。
- 日下
- 私の専門は機械です。浄化センター内にはポンプなどの機械設備が多数配置されており、そうした機械設備を浸水から守るための方策を企画設計しました。今回のプロジェクトの詳細設計は、ベテランのリーダーのもと、建築、土木、機械の各領域をそれぞれ私たち若手に任されており、鈴木さんや山田さんとも密に連携しながら設計を進めています。

現場で直面するさまざまな問題を、
知恵と情熱をもって乗り越えていく。
浄化センターを水害から守るため、3人はそれぞれどのような設計を行いましたか?
- 山田
- 土木の観点から一例を挙げると、この浄化センターには地下にポンプ設備を置くためのポンプ室があり、上部に搬入開口が設けられているのですが、浸水した際にそこから浸水するリスクが見受けられます。そのため、搬入開口の周囲に壁を立ちあげる案を検討し、浸水時の水圧に耐えられるか等、構造計算をしながら設計を行いました。そのほかにも、浸水の危険があると思われる箇所にそれぞれ適切な対策を講じていきました。
- 鈴木
- 地上の建築物も同様で、やはり開口部から浸水する可能性が大きいです。各施設の浸水する深さや扉の利用頻度等を確認し、新たに防水扉や防水板を設置するなど、あらゆるリスクを洗い出しそれを潰していくことに力を注ぎました。
- 日下
- 私が担当する機械設備に関しては、重要な機械は物理的に位置を上げて浸水しない対策を施しました。架台などを使って、想定される浸水の高さを上回る場所に機械を移設するプランを立て、具体的な設計に落とし込んでいきました。
設計を進めるにあたって、どのような点に苦労しましたか。
- 山田
- 今回の耐水化の詳細設計は、浄化センターが建設された時の図面をもとに対策を検討していったのですが、実際に現地に赴いてみると、私が想定していた状況と異なっていたことがありました。私に知識が不足していたため、図面に書かれていた内容を正確に把握できず、不必要な設計を行って時間を浪費してしまいました。その時はとても反省し、もっと知識を高めていかなければと強く思いましたね。
- 日下
- 私も何度か現地の浄化センターに足を運びましたが、現場に行かないとわからないことがたくさんあります。机上で設計しているだけでは、落とし穴にはまってしまいますよね。
- 山田
- そうですね。施設でどのような構造になっているのかを自分の目で確かめて、そこで『こんな対策をすればきっと浸水を防げる』と頭のなかでイメージすることが大切だと思います。それが実際に形になっていくことに私はこの仕事の醍醐味を感じています。
- 日下
- 知識という点では私も至らなさを痛感しています。実は耐水化のプロジェクトに携わるのは今回が初めてでした。浸水対策はとても奥が深くて、頭を悩ませる毎日です。重要な設備は高所に移設すれば安全だと話しましたが、機械設備同士は配管・ダクト等で接続されているため、一見して浸水リスクが低いと思われる設備にも、これらを通じて大量の雨水が流入する可能性があります。このような状況が発生すると設備全体に大きな影響を及ぼすことがあるため、水処理プロセス全体を正確に把握し、浸水時の状況を具体的にイメージしながら対策していかなければなりません。その力がまだまだ私には足りず、上司にアドバイスいただきながら何とか設計を進めているところです。
- 鈴木
- プロジェクトを進めていくと、どうしても予期せぬ事態に遭遇します。今回、私は基本設計から関わりましたが、実際に詳細設計の段階になって現場に触れると、基本設計で考えていた対策が実現困難なケースもあります。今回もそんな場面があり、お客様に再度ご説明することになりました。設計の変更にあたってお客様に納得いただけるよう、わかりやすく図などを交えて説明を行います。私たちコンサルタントは提案力や折衝力が大切です。当社は若いうちからお客様の前に立ち、自分の言葉で説明する機会を与えてくれるので、成長も早いように感じています。

若いうちから成長できる機会が豊富にあるのが、
日本水工設計の魅力。
プロジェクトを進めるなかで、やりがいを感じるのはどんな瞬間ですか。
- 山田
- やはりお客様からご評価いただけた時ですね。今回、耐水化のためにさまざまな方式を考案したのですが、それを一覧で比較検討できる資料を作成したことでお客様から好評をいただきました。自分の提案が認められ、これが実現し、地域の役に立てると実感できる時はとてもうれしいですね。
- 日下
- まだこのプロジェクトは進行中ですが、過去、自分が設計に関わった施設が目の前で形になって現れた時はいつも感動します。こちらの浄化センターの設計も無事に成し遂げて、そんな感動を味わいたいですね。
- 鈴木
- この仕事は本当に社会貢献を実感できる仕事だと思います。以前、ある地方の雨水ポンプ場の改築を担当した際に地域の住民の方と接する機会があり、「この施設ができたおかげで水害が減り、安心して暮らせるようになった」というお言葉を直にいただきました。その時は本当に感銘を受けましたし、自分の仕事の意義をあらためて強く感じました。
このプロジェクトでの経験をもとに、3人はこれからどのようにキャリアアップしていきたいと考えていますか。
- 山田
- このプロジェクトで処理場の耐水化の詳細設計を自分が主導しながら進める経験を積み、仕事の幅が大きく広がったように感じています。今後は上流工程である基本計画にも携わり、プロジェクトを最初からリードできる人材になりたいと思っています。そのために、会社の支援も得ながら技術士資格の取得に挑戦しているところです。
- 鈴木
- 私も若いうちから本当にいろいろな経験を積ませてもらっているので、さらにキャリアアップしてチームを率いることのできるポジションを目指したいと考えています。技術力のみならずマネジメントの能力も磨いて、より大きなプロジェクトを動かせる人材になりたいですね。
- 日下
- 私は技術者としてもっとレベルアップして、どんな課題に対しても的確な答えを出せる人になりたいです。いまの私の上司がまさにそんな方で、膨大な知識ですぐに解決へ導いてくれます。本当に凄いと尊敬していて、その上司が私の目標です。現在は知識を広げていくために、新たな技術の勉強に努めています。学習の機会も豊富に用意されていて、コンサルタントとして成長するには日本水工設計はとても良い環境だと感じます。
- 山田
- 土木や建築、建築設備、機械設備、電気設備、などのさまざまな領域の専門家が揃っているのも、日本水工設計の強みだと思います。特に大阪支社はお互いの距離も近く、チームワークで難しい問題に立ち向かっていけることに私は魅力を感じていて、これからも一丸となって水インフラに関する社会課題の解決に貢献していきたいです。
※所属、掲載内容は取材当時のものです
